苦いデビュー
デビュー戦はほろ苦かった。

僕の山歩きは、就職して配属された富山で始まった。
見知らぬ土地で友達もいない。
そんな環境のなか、ふと山に登ってみたいと思った。
ザックとトレッキングシューズを購入し、意気揚々と立山町にでかけた。

中腹の登山口につくと、ポツポツと雨が降り出した。
雨具の装備は折りたたみ傘のみ。
レインウェアなんて持っていない。
行けるところまで行こうと、登り始める。
15分ほど歩く頃には雨が本降りになってきた。

小ピークらしき看板を見つけ、写真を撮ったことに満足し、撤退。
車に戻り、来た道を引き返す。
30分も歩いていないのに登山デビューと言っていいのだろうか。
そんなことを考えていると、スピードの出たトラックの対向車が走ってくる。
道幅は狭い。離合できるやろうか?
急いで路肩に避ける。
釘か何かが落ちていたのだろう。
タイヤがパンクした。
運の悪いことに、ブロックにバンパーも擦ってしまった。

そんな苦すぎる思い出とともに、
デビュー戦は幕を閉じた。
山にはもう行かない。
そそくさと、ザックとトレッキングシューズをリサイクルショップに持って行った。
2. 自然の中にもう一歩
それでも、自然との繋がりは持てていた。
海が近かったこともあり、ちょくちょく海釣りにいっていた。

海に糸を垂らし、ボーッと景色を眺めたり、
風を感じながら、魚のアタリを待つ。
そんなゆったりした時間も悪くなかった。
おもしろさは、釣果しだい。
そのうち、幼少期にキャンプに行ったことを思い出し、キャンプを始めてみた。
自然の中に身を置き、ご飯を食べて、火を囲う。

ひとりで行っても、家族や友人と行っても楽しい。
こんな穏やかな時間を過ごせるのかと、
どんどんとのめり込んだ。
しかし、現代人は忙しい。
泊まりがけでキャンプに出かけると、
土日が両日潰れてしまう。
デイキャンプという楽しみ方ももちろんある。
キャンプ中毒だった当時は、デイキャンプでは物足りなかった。
困ったものだ。
そんな時、妻からひとつの提案があった。
「登山やったら、日帰りで楽しめるよ?」
(ほう…)
数年前の苦い記憶が蘇る。
それでも、妻に背中を押してもらい、
ふたりで山を歩いてみることにした。
向かったのは、石川県の鞍掛山。
Google先生によると、初心者にもおすすめとのこと。
登り始めると、肺と足の筋肉が悲鳴をあげ始める。
Google先生、本当に初心者向けですか…?
めちゃくちゃキツいんですけど?!
初めは本当にわからなかった。
なぜ、キツい思いをして山を登るのか。
文句や弱音を垂れながら、何とか山頂に到着すると、景色が変わった。
おお!凄い!
山頂で景色が眺めていると、疲れを少しだけ忘れられた。
小さな達成感を胸にゆっくりと下山する。
下りは、少し気持ちに余裕がでてきて、
森の景色を楽しむことができた。

山歩きの楽しさの片鱗をほんの少しだけ感じた。
それからは、時々、片道1時間くらいで登れる、近くの低山にも足を運ぶようになった。
手持ちのキャンプ道具を活かして、山ご飯も楽しんだ。
少しずつ体力がついてきた思うと、
今度は腕試しをしたくなり、再び鞍掛山に挑んだ。
竜の背と呼ばれる岩場も難なく、通過し、

再びピークを踏む。
お湯を沸かし、カップラーメンを食べた。
美味すぎる。

遠くに見える雪景色した山は白山というらしい。名前のまんまだな。
登山も案外、悪くない。
